うごか)” の例文
新字:
老いたる方の漕手答へて、舟を停むべきところは、さきに漕ぎ出でしところの外たえて無ければ、是非とも島を一周せでは叶はずといひつゝ、うごかす手を急にしたり。
童子はこれを見るごとに戀しくなつかしきこと限なく、人知らぬ愛に胸を苦めたりき。漁父は童子を伴ひて海に往き、うごかし帆を揚げ、暴風と爭ひ怒濤と鬪ふことを教へつ。
その漸く近づくをうかゞへば、靜かにうごかすものは一人の老翁なり。艣の一たび水を打つごとに、波は薔薇花紅ばらいろべにを染め出せり。舟のへさきに一人のうづくまれるあり。その形女子をみなごに似たり。