握緊にぎりし)” の例文
ただ黙って、一郎の冷たい手を握緊にぎりしめるのだった。それ以上なにを云う必要があろう。今こそ父と子とはぴったりと結び着いたのだ。
劇団「笑う妖魔」 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
はじめて心付くと、厠の戸で冷く握って、今まで握緊にぎりしめていた、左のこぶしに、細い尻尾のひらひらと動くのは、一ぴき守宮やもりである。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
仙太は目をみはりて、我にもあらでひしと握緊にぎりしむる手を、女は慌てて振払い
片男波 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
彼は宮の手を取りて、情に堪へざる如く握緊にぎりしめつ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
伊藤青年は脇の下に冷汗の流れるのを感じながらひし拳銃ピストル握緊にぎりしめていた。
亡霊ホテル (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
帰航の途につきながら、船長は伊藤青年の手を固く固く握緊にぎりしめて云った。
流血船西へ行く (新字新仮名) / 山本周五郎(著)