掉尾とうび)” の例文
そしてついには彼の両神山の奇峭を掉尾とうびに振い起して、この大山脈を竜頭蛇尾に終らしめない所に、自然の用意の周到なることが窺われる。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
あの降参が如何にも飄逸ひょういつにして拘泥しない半分以上トボケて居る所が眼目であります。小生はあれが掉尾とうびだと思って自負して居るのである。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
幕末における伊藤八兵衛の事業は江戸の商人の掉尾とうびの大飛躍であると共に、明治の商業史の第一ページを作っておる。
ここに葛飾北斎かつしかほくさい一立斎広重いちりゅうさいひろしげの二大家現はれ独立せる山水画を完成し江戸平民絵画史に掉尾とうびの偉観を添へたり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
上野の杉山を買収して第二博信館と称し、大いに掉尾とうびの繁昌を示したが、時勢は進む、デパートの出現やら安物仕入れのたたりやらで、もう大正の初め頃には
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
掉尾とうびの大功を惜しげもなく割愛して、後進に花を持たせた先輩の襟懐きんかい、己を空しうして官庁の威信を添えた国士の態度、床しくもまた慕わしき限りではないか。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
その白兵戦のうちに各人が掉尾とうびの勇を振った。街路には死屍しかばねが累々と横たわった。
殊に後者は山が日本北アルプスの中枢にあるだけに、此時代に於ける開山の最後を飾るにふさわしい掉尾とうびの業績であった。
山の今昔 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
甲信武甲の国境を東走して来た秩父山脈は、どの道この辺でこれ位な高度の山を掉尾とうびふるい起して、武蔵野に君臨せしめなければならない筈だ。高さ二千十七米七。
秩父の奥山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)