“戌亥(いぬい)” の例文
そのころ、毎夜戌亥(いぬい)の空に一つの箒星(ほうきぼし)が現われて、最初は長さ三、四尺で光りも弱いが、夜のふけるにつれて大きくなって行く。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
この崎から伊勢の港湾までは五里足らずだから、「助けたまえ、お伊勢さま」とそのほうへ向いて拝んでいるとき、急に風が戌亥(いぬい)にまわった。
重吉漂流紀聞 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
戌亥(いぬい)へ向いて参らなければならないのに、この舟はいま未申(ひつじさる)の方へ向いて進んでいるのです、これでは竹生島へ着きません
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「宮門の戌亥(いぬい)に、虹が立った」夜の人出に紛(まぎ)れこんで、こう囁き廻る者がある。むかしから、宮苑の森に虹が立つと戦があるということを、洛中の民は信じていた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「此方(こちら)には——(戌亥(いぬい)に五歩、丑寅(うしとら)に七歩、石猿を叩いて道自ら開くべし)——とある」
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
そんな卑怯な真似をなさらないで、お武士ならおさむらいらしくはっきりと話をつけてくださいッ!——どこへお出かけでございます?……存じております! 戌亥(いぬい)の方。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「風が変った、丑寅(うしとら)が戌亥(いぬい)に変ったぞ、気をつけろやーい」
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
地の女好きにこの探索(さぐり)の心が手伝って、町内の若い者が三、四人、毎夜のように交替(かわりあ)って近江屋の前からお艶の後を尾(つ)けつけしたが、本八丁堀を戌亥(いぬい)へ突っ切って正覚橋を渡り終ると
折あしく戌亥(いぬい)の強風。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)