慨世がいせい)” の例文
春満の情熱も、慨世がいせいの嘆も、内蔵助に話していたのでは、とんと反応があるのかないのか分らないのであったが、ひとたび堀部安兵衛に会って話すと
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たといそれがやむにやまれぬ慨世がいせいのあまりに出た言葉だとしても、天子をさしはさむというはすなわち武家の考えで、篤胤の弟子でしから見れば多分に漢意からごころのまじったものであることは争えなかった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ともに莱州らいしゅううまれだが、武芸はいずれ劣らない。慨世がいせいの気があり過ぎてかえって世にれられぬ狷介けんかいの男どもだ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
純友が、腐敗貴族をののしり、慨世がいせいまなじりをあげて、塗炭の民を救えとか、救世の慈父たらんとか、くだを巻くようにいったのも、記憶にはないことはない。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、ただの変屈か、いまの世にあきたらない慨世がいせいの人か、それとも生来、清隠を好んで世俗の塵埃じんあいをいとうだけの者か、その辺の心事は、当人のほかは誰も知らない。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)