悲泣ひきゅう)” の例文
詩は、五言四絶ごごんよんぜつ、わずか二十字にすぎないが、同胞相剋どうほうそうこく悲泣ひきゅうとうらみを訴えて人の胸を打たずにおかない。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
袁傪は叢に向って、ねんごろに別れの言葉を述べ、馬に上った。叢の中からは、又、え得ざるが如き悲泣ひきゅうの声がれた。袁傪も幾度か叢を振返りながら、涙の中に出発した。
山月記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
うわあッ! と直ぐ、あとは、よよと許りに悲泣ひきゅうする小児のような泣き声。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
二つの響はあたかも余等のむねの響に通うた、砲声の雄叫おたけび、鐘声の悲泣ひきゅう
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
美女悲泣ひきゅうす。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白刃を見ると、巧雲はヒーッと悲泣ひきゅうしだした。そして、のがれ得べくもないいましめをもがき抜いて、半裸の白い肉体に縄目が食い込むばかりムチムチと波打ちもだえた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
豆は、何をうらめばいいのか。——沸々ふつふつたる熱湯の中の悲泣ひきゅうは、たれが聞いてくれるのか。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)