性命いのち)” の例文
いつまでも変らずにある真鍮しんちゆうの香炉、花立、燈明皿——そんな性命いのちの無い道具まで、何となく斯う寂寞じやくまく瞑想めいさうに耽つて居るやうで
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
追憶おもひでの林檎畠——昔若木であつたのも今は太い幹となつて、中には僅かに性命いのちを保つて居るやうな虫ばみ朽ちたのもある。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
繋留場には、種牛の外に、二頭の牡牛もつないであつて、丁度死刑を宣告された罪人が牢獄ひとやの内に押籠おしこめられたと同じやうに、一刻々々と近いて行く性命いのちの終を翹望まちのぞんで居た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)