思做おもひな)” の例文
一度ひとたびは絶えし恋ながら、なほ冥々めいめいに行末望あるが如く、さるは、彼が昔のままのかたちなるを、今もそのひとりを守りて、時の到るを待つらんやうに思做おもひなさるるなりけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
彼は人類を軟骨動物と思做おもひなし、全く誠信なく、全く忠誠なく、心宮中に横威を奮ふ一種の怪魔が自由に人類を支配しつゝありて、咄々とつ/\、奇怪至極の此社界かなと観念し来りて
必竟ひつきやう人々の思做おもひなし次第にて、苦とも樂とも見らるゝが自然の本相なり。此故に造化の作用を解釋するに、彼宿命教の旨を以てするも解し得べく、又耶蘇教やそけうの旨を以てするも解し得べし。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)