忿おこ)” の例文
彼が忿おこって帰ってしまわないようにと、彼女は言い訳をしたり、御機嫌を取るためにいて笑顔を作ったりした。
それはよかったけれど、お酒飲みだすと、あの人の態度何だか気障きざっぽくて、私忿おこって廊下へ飛び出しちゃったものなの。そうなると、私後ろを振り返らない女よ。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
相手を忿おこらして死なしておる者もあるので、冥府から本司に知らしてきて、捉えて獄に入れたが、もう已に牛となって、隣の家に生れて、その負うところを弁償さしておる
富貴発跡司志 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
坊ちやんはさつきから、洗吉さんに相手になつてお貰ひになつて、六畳でふざけてお出でになつたが、見ると、どうしてか忿おこつてはたきを振り上げて手向ひをしてゐられる。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
又五郎は面を掩ったまま、忿おこっているというよりは虚脱したような調子で続けた。
(新字新仮名) / 山本周五郎(著)
この魚が身体に不相応に大きいあの顎を脹らませて忿おこったような顔をしているのはちょっと滑稽である。肉はかなり強靭でそれに脂が濃いために少しばかり口の中で滑べるような感じがする。
雑魚図譜 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)