御軫念ごしんねん)” の例文
人民同士が互に不幸への憤りを見当違いにぶっつけ合って苦んでいる間は、漁夫の利で「御軫念ごしんねん」というような表現の陰にかくれ得る。
女の手帖 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
いま養父勝家と筑前守との間さえ和せば、織田遺臣もまるおさまってゆき、ふたたび天下に大乱を見ることもあるまい。かみ御軫念ごしんねんを安んじ奉り、下万民のためだ。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
国家の如何なる大事変に際しても、何人なんぴとよりも先に御軫念ごしんねん遊ばされるのが、上御一人であることを思ふとき、我々は三思して日本国民たる多幸を思ひ、奉公の誠を尽くすべきだと思ふ。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
一切はそれひとつでも和解し得るはずと思う。いわんや其許そこもとには、先頃、叙位じょい任官のありがたい恩命にも浴された折ではないか。この上、御軫念ごしんねんを悩まし奉るは、余りに畏れ多くはないかの
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)