御新ごしん)” の例文
薄暗い中に、紋附きの羽織を着た、斬髪の伸びた村上先生がいた。御新ごしんさんは庭で——空地で、粗末なべっついで御飯をいている。
これを「御新ごしんさん」といつた。その一人がぼくの生母です。ぼくはこの木村家(いろは)の第八番目に出生した男子といふわけで荘八の名をつけられ、父は荘平といひました。
私のこと (新字旧仮名) / 木村荘八(著)
「おい、お絃、それじゃアおめえ、御新ごしんさんに、何の用事だかわからねえじゃアねえか」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
縫「誠に御無沙汰をいたしました、此間こないだは有難う……今日こんにち御新ごしんさんはお宅に」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「まあ御新ごしんさん。いらしって御覧なさい。ほんとうに何だと思ったら、——」
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
御新ごしんさん御新さん。玉子屋がきましたヨ。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
御新ごしんさま、——銭形の親分ですよ」
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
先生は色の黒い菊石面あばたづらで、お媼さんは四角い白っちゃけた顔の、上品な人で、昔は御祐筆ごゆうひつなのだから手跡しゅせきがよいという評判だった。御新ごしんさんはまだ若くって、可愛らしい顔の女だった。
「アノ、ちょっと御新ごしんさん——」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)