御倉おくら)” の例文
第二の幽霊 駄目だめ、駄目。何処どこの芝居でも御倉おくらにしてゐる。やつてゐるのは不相変あひかはらずかびの生えた旧劇ばかりさ。君の小説はどうなつたい?
LOS CAPRICHOS (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
またくらのようなものは、おほくは今日こんにち奈良なら正倉院しようそういん御倉おくらなどにるような、みあはせた校倉あぜくらといふものであつたとおもはれます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
その時ですら、口もきかずに過ぎたものを、今に見知ろうはずがない。御倉おくらさんの旅の衣は鈴懸のと云う、ごとの声もよも聞き覚えがあるとは云うまい。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小供の時分、門前に万屋よろずやと云う酒屋があって、そこに御倉おくらさんと云う娘がいた。この御倉さんが、静かな春の昼過ぎになると、必ず長唄の御浚おさらいをする。御浚が始まると、余は庭へ出る。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)