後嗣あとつ)” の例文
一体「不孝には三つの種類があって後嗣あとつぎが無いのが一番悪い」、そのうえ「若敖之鬼餒而むえんぼとけのひぼし」これもまた人生の一大悲哀だ。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
長男は俺の後嗣あとつぎ相当に生れついているが、次男坊はやくざな暴れ者だで、よその空でのたれ死でもしくさるだろうと、近所の者をつかまえて眼を細くしている。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
十二、三の時から私は勝手元かってもとで祖母の手伝いをさせられた。岩下家の後嗣あとつぎから女中におとされたのだ。
かくてまず別に落ち度もなく、師匠の葬式は後嗣あとつぎがまだ子供の仮葬ではありましたが、生前名ある彫刻師として、まず恥ずかしからぬだけのとむらいを出したのでありました。
ついでだが、伯父は最初から正妻といふものを置かず、妾から妾を渡り歩くといふ放縦遊冶いうやの生活をつゞけてゐて、そしてその誰にも子供がなかつたので、お信さんの外にも、後嗣あとつぎの養子を別にして
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
それによって私は、私の代りに今一度この貞子さんが岩下家の後嗣あとつぎに定められているのを知った。岩下家からいろいろのものが貞子さんに贈られているのも知った。
私はただ、学校は高等きりやってくれなかったこと、及び、貞ちゃんが岩下の後嗣あとつぎときめられて、私はもう岩下には用のない人間となったから帰されたということをだけ話した。