影口かげぐち)” の例文
緑雨の愚痴は壱岐殿坂時代から初まったが、それ以後失意となればなるほど世間の影口かげぐちに対する弁明即ち愚痴がいよいよ多くなった。
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
後家という者はいつの世でも兎角人に影口かげぐち言れ勝の、割の悪いものだから、勝気の祖母はこれが悔しくてたまらない。それで、何の、女でこそあれ、と気を張る。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
さかなを買うにも主人の次には猫の分を取った。残殽あまりを当てがうような事は決してなかった。時々は「猫になりたい」という影口かげぐちもあった。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
勿論もちろん美妙の家で蕎麦そば一つ御馳走ごちそうになったという人もなかったようだ。かえって美妙を尋ねる時は最中もなかの一と折も持って行かないと御機嫌ごきげんが悪いというような影口かげぐちがあった。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)