彫刻きざ)” の例文
岩は昔ながらの形に畳み上げられてあり、苔も昔ながらの色にむしており、南無妙法蓮華経と彫刻きざまれてある碑も、昔ながらの位置に立っていた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かつ空虚うつろのように捨吉の眼に映った天井の下、正面にアーチの形を描いた白壁、十字を彫刻きざんだ木製の説教台、厚い新旧約全書の金縁の光輝ひかり、それらのものがもう一度彼の眼にあった。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あたかも浪の打附ぶつかって様々に砕くるのが、あさひに輝き、夕陽ゆうひに燃え、月にあらわれ、時雨にかくるる、牡丹ぼたんの花に、雌雄の獅子ししの狂うさまを自然に彫刻きざんで飾ったような、巌を自然の石垣は
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)