形代カタシロ)” の例文
虚空から舞ひ下つて掴み去る火車クワシヤ・地上に在つて坏土ハウドを発く狼を脅す髯籠の用は、日の形代カタシロたる威力を借るといふ信仰に根ざしてゐるのである。
盆踊りと祭屋台と (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
其は火袁理ホヲリ命の目無堅間マナシカタマ・熊野大神の八目荒籠ヤツメノアラコ秋山下冰壮夫アキヤマノシタビヲトコ形代カタシロを容れたといふ川島のいくみ竹の荒籠などぼつ/\見えてゐるのが其で
髯籠の話 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
此人形が、お迎へ人形となり、其が主神に合体して、神の形代カタシロとも考へられる様になり、更に下つては、後の人形芝居を生む事にもなつたのである。
さすれば、ひなは男神・女神の揃つたもので、祓除の形代カタシロ以前からあつたものと思うてもよからう。
雛祭りの話 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
穢れを移す人形とは即、モノ形代カタシロ天児アマガツなどの名によつて呼ばれるものである。なる程、かう説明すると、上巳の節供と雛人形との関係、延いては淡島との聯絡もつかう。
雛祭りの話 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
勿論、平安朝頃の上流の女たちの玩び物にはモノ形代カタシロ天児アマガツなどいふ名で呼ばれた人形はあつたのであらうが、祓除の穢れを移す人形を、其儘、玩具にしたとはいへない。
雛祭りの話 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
茲に自分は、太陽神の形代カタシロ製作に費された我祖先の苦心を語るべき機会に出遭つた。
髯籠の話 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
要するに、此等のものいみは、何れも少女が、神を接待する為の、聖なる資格を得る為で、三月の雛祭りは、此接待する神の形代カタシロを姑く家に止める風習から出た、と見るのが一等近い様だ。
海のあなたから来り臨む神の形代カタシロとしての人形に、神の身ぶりを演じさせて居たのが、うかれ人の祝言に使はれた為に、門芸として演芸の方に第一歩を、踏み入れる事になつたのであらう。
国文学の発生(第二稿) (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
穢れを移す人形とは、でもの・形代カタシロ天児アマガツなどの名によつて呼ばれるものである。此は、別のものに代理させる、と言ふ考へから出て居る。或は、道教の影響が這入つて居るとも思はれる。
「標の山」は神の天降アモる所であつて、其を曳いて祭場に神を迎へるといふ考へなのだ。此作り山は、神物のしるしなるたぶうの物を結ぶと共に、神の形代カタシロを据ゑるといふ考へもあつたのである。
国文学の発生(第二稿) (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
人形の事は、今までに発言の機会を逸して来たが、倭本村に深い関係を交錯してゐる村々の中で、古くから神の形代カタシロなる人形を持つたものが、段々ある。倭の村にだつてなかつたとはきめられぬ。
国文学の発生(第二稿) (新字旧仮名) / 折口信夫(著)