ゆみ)” の例文
さわりさわりとその肩の長い棹をゆみに、そのきを線路につけて、その鉄橋の枕木の上を拾い拾い渡る男も見えた。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
お高の白い握りこぶしが、弱々しいゆみを描いて磯五の面上に降りつづけた。お高は、泣いていた。すすり泣きながら、一つ二つと数えるように磯五をぶっていた。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
雀躍して家にとつて返した紀昌は、再び窓際の虱に立向ひ、燕角のゆみに朔蓬のやがらをつがへて之を射れば、矢は見事に虱の心の臟を貫いて、しかも虱を繋いだ毛さへ斷れぬ。
名人伝 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
桑のゆみよもぎの矢をこしらえて、それで天地四方を射ると申します、これは将来、男が身を立て、名を揚げて、父母を顕わすようにと祝福するためであります、恩愛の情にひかれて
愛卿伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
雀躍じゃくやくして家にとって返した紀昌は、再び窓際の虱に立向い、燕角えんかくゆみ朔蓬さくほうやがらをつがえてこれを射れば、矢は見事に虱の心の臓をつらぬいて、しかも虱を繋いだ毛さえれぬ。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)