引込思案ひっこみじあん)” の例文
がいして豐玉姫とよたまひめ系統けいとういたものは、あまりはしゃいだところがなく、どちらかといえばしとやかで、引込思案ひっこみじあんでございます。
実際、串戯じょうだんではない。そのくらいなんですもの。仏教はこれから法燈ほうとうの輝く時です。それだのに、何故なぜか、貴下あんたがたが因循いんじゅんして引込思案ひっこみじあんでいらっしゃる。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
千代ちゃんのような活溌かっぱつな人から見たら、僕見たいに引込思案ひっこみじあんなものは無論卑怯ひきょうなんだろう。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は子供の時分から、どうしたものか、世にも陰気な、引込思案ひっこみじあんな男でありました。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
不景気な考え方だ引込思案ひっこみじあんだと言われると、随分もっともな意見を持っていてもすぐへこたれ、明らかに無謀な積極政策を提案しても、大抵は威勢がいいの進取的だのと言って誉められる。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「おい六升男爵。そうお前さんのように、何から何まで疑い深く、そして敗戦主義になっちゃ困るじゃないか。始めからそんな引込思案ひっこみじあんな考えでいっちゃ、取れるものも取れやしないよ」
暗号音盤事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
天賦的に引込思案ひっこみじあんな者ではなく、男子専権の社会に圧迫されて、自主的に行動する意気を麻痺まひし、もしくはわざと遠慮気兼をして、万事に控目な依頼主義を取っているに過ぎないのですから
新婦人協会の請願運動 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)