引被ひっかず)” の例文
たちどころに半病人となって、住居すまいへ帰り、引被ひっかずいても潜っても、夜具の袖まで、ふわふわ動いて、押えてもめても、しきりに動く。学者は舞踏病の一種だと申されよう。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
月の客と澄ましてながめている物見の松の、ちょうど、赤い旗が飛移った、と、今見る処に、五日頃の月が出て蒼白あおじろい中に、松の樹はお前、大蟹おおがに海松房みるぶさ引被ひっかずいて山へ這出はいでた形に
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)