広濶ひろ/″\)” の例文
旧字:廣濶
河原の砂の上を降り埋めた雪の小山を上つたり下りたりして、やがて船橋の畔へ出ると、白い両岸の光景ありさまが一層広濶ひろ/″\と見渡される。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
まして始めから気象の荒い雑種と来たからたまらない。広濶ひろ/″\とした牧場の自由と、誘ふやうな牝牛の鳴声とは、其種牛を狂ふばかりにさせた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
水内みのちの平野は丑松の眼前めのまへに展けた。それは広濶ひろ/″\とした千曲川の流域で、川上から押流す泥砂の一面に盛上つたところを見ても、氾濫はんらんすさまじさが思ひやられる。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
長らく山の上に引籠ひきこもつてばかり居た私は、こゝへ来て、広濶ひろ/″\とした海国の人の気象に触れた。そればかりでなく、わざ/\こゝまでやつて来た旅の目的をも果すことが出来た。
突貫 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)