干潮かんちょう)” の例文
干潮かんちょうの時は見るもあわれで、宛然さながら洪水でみずのあとの如く、何時いつてた世帯道具しょたいどうぐやら、欠擂鉢かけすりばちが黒く沈んで、おどろのような水草は波の随意まにまになびいて居る。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そうじゃないよ、いますこしたてば干潮かんちょうになる、潮が引けばあるいはこのへんが浅くなり、徒歩とほで岸までゆけるかもしらん、それまで待つことにしようじゃないか」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
欄干にって下を見ると満潮まんちょう干潮かんちょうか分りませんが、黒い水がかたまってただ動いているように見えます。花川戸はなかわどの方から人力車が一台けて来て橋の上を通りました。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
干潮かんちょうに乗じて作事さくじをしておいて、それから満潮の勢いと喞筒の力で引き揚げるのだそうだ。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)