常談じやうだん)” の例文
霧島躑躅きりしまつつじ じやう——常談じやうだん云つちやいけない。わたしなどはあまりせはしいものだから、今年ことしだけはつい何時いつにもない薄紫うすむらさきに咲いてしまつた。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
人の好い禿げ頭の総代役はかう常談じやうだんなどもつけ加へた。それを又若い小学教員は不快さうにじろじろ眺めたりした。
一塊の土 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
予は常に確信す、大正の流俗、芸術を知らず、無邪気なる彼等の常談じやうだん大真面目おほまじめに随喜し渇仰かつがうするの時、まづ噴飯ふんぱんに堪へざるものは彼等両人にほかならざるを。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
少しも常談じやうだんを交へずに文芸の誕生はヒステリイにも負つてゐるかも知れないと思ひ出した。
若し彼等の「常談じやうだん」としたものを「真面目まじめ」と考へて見るとすれば、黄表紙きべうし洒落本しやれぼんもその中には幾多の問題を含んでゐる。僕等は彼等の作品に随喜ずゐきする人人にも賛成出来ない。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
芸者は始は常談じやうだんにしてゐた。けれども僕の座に坐るが早いか、「あら、ほんたうに見えるわ」と言つた。菊池や久米もかはがはる僕の座に来て坐つて見ては、「うん、見えるね」などと言ひ合つていた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)