さかずき)” の例文
今は「四十年前少壮の時、功名いささひそかに期する有り。老来らず干戈かんかの事、ただる春風桃李のさかずき」と独語せしむるに到りぬ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
まず御坊が、かの徒然草に書かれましたる中に『よろずにいみじくとも、色好まざらん男はいと騒騒しく、玉のさかずきのそこなき心地ぞすべき』
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いかに見極みきわめても皿は食われぬ。くちびるを着けぬ酒は気が抜ける。形式の人は、底のない道義のさかずきいだいて、路頭に跼蹐きょくせきしている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
母のことば黙止もだし難くて、今日山木の宴に臨みつれど、見も知らぬ相客と並びて、好まぬさかずきぐることのおもしろからず。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
一方では玉のさかずきに底あることを望んだり、久米くめの仙人に同情したり、恋愛生活を讃美したりしているが
徒然草の鑑賞 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)