山気やまぎ)” の例文
旧字:山氣
すなわち一転すれば冒険心となり、再転すれば山気やまぎとなるのである。げんに彼の父は山気のために失敗し、彼の兄は冒険のために死んだ。
非凡なる凡人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
のみならず一家の老若も、次男の仕事には同情がなかつた。山気やまぎに富んだ三男は、米相場やかひこに没頭してゐた。三男の妻は次男の病に、女らしい嫌悪を感じてゐた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
どこまで山気やまぎがあるんだか分らないんで、私も少々剣呑けんのんになってるんですよ。それでも離れているうちは、まあどうかしているだろうぐらいに思って放っておきます。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どうか致すと、沖に行く臆病な人が一週間も掛かつて取るだけの魚を、わたくし共は一日に取つて帰りました。つまりわたくし共は山気やまぎのある為事しごとをしてゐたのでございますね。
うづしほ (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
けれどもその家庭にはいつも多少の山気やまぎが浮動していたという証拠しょうこには、正作がある日僕に向かって、うちには田中鶴吉たなかつるきちの手紙があると得意らしくったことがある。
非凡なる凡人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
企業熱の下火になった今日こんにちといえども、日本中にたくさんある会社に、相応の口の一つや二つあるのは、もちろんであるが、親譲おやゆずりの山気やまぎがどこかにひそんでいるものと見えて
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あなたなんざ、これからの身体からだだ。おとなしくさえしていりゃどんな発展でもできようってもんだから、肝心かんじんなところで山気やまぎだの謀叛気むほんぎだのって低気圧を起しちゃ親不孝に当らあね。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
叔父は事業家でいろいろな事に手を出しては失敗する、云わば山気やまぎの多い男であった。宗助が東京にいる時分も、よく宗助の父を説きつけては、うまい事を云って金を引き出したものである。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)