屋鳴やな)” の例文
あとは一時にすさまじい屋鳴やなりとおめき。ふすま障子の狼藉ろうぜきはもとよりのこと、旅芸人の仮の家だけに、家財器具のなかっただけが幸せです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一瞬の屋鳴やなりがやむと、はや主人のは縄付きとされ、家じゅう大乱脈の中を、深夜、管領庁かんりょうちょうへと引ッ立てられて行った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いちど押し入った人間どもが、ど、ど、どッと屋鳴やなりのうちにまた、外へまろび出して来た。どれもこれもあけに染まり、手足満足なのは一人もない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こんなあいだも明朝の出陣支度に沸く武者声やら物音は、まるで屋鳴やなりのようなとどろきだった。この屋敷、この大蔵おおくらやつ、はじめての活気なのだ。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はりの揺れるような屋鳴やなりがした。彼を投げつけたが、官兵衛も共に勢いよくたおれたのである。すかさず、四、五人の武士が体当りにしかかって来た。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
李逵は楊大臣以下の宮廷人らを相手に例のごとき持ち前の暴勇をふるい出し屋鳴やなり振動のうちに、あやまって、どこかでは火を失し、焔、黒煙、その中を、帝は、裏の坑道あなみち
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
皇后ノ宮の武士景正は、賊と渡りあって欄下らんかに斬り落され、滝口ノ武者もたくさん寄って来て「そこぞ」「彼方ぞ」「逃がすな」と、台盤所だいばんどころから藤壺にまで屋鳴やなりが駆けわたっていた。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
屋鳴やなりの中に、ふすまは破れ、調度は仆れた。——と、同時に、隣室や壁の蔭に、主人の身を案じて隠れていた数正の家臣たちも、つむじの部屋へなだれ入って、さらに、大きな震動をたてた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
館じゅうの屋鳴やなりを白い顔に聞きすましていた。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)