居住いずまい)” の例文
「だいぶ御邪魔をしました」と立ちける前に居住いずまいをちょっとつくろい直す。洋袴ズボンひだの崩れるのを気にして、常は出来るだけ楽に坐る男である。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
側で聴いているガラッ八の八五郎の方は、居住いずまいを直したり、額を叩いたり、長んがいあごを撫で廻したり、話を聴く前からもう、一方ならぬ興奮です。
女中が出ていってから、中野さんは慌しく居住いずまいを直し、襟をつくろい、頭のこわい毛を一寸撫でつけた。
叔父 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
梓はここに至って居住いずまいを直した。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
居住いずまいは心を正す。端然たんねんと恋にこがれたもうひいなは、虫が喰うて鼻が欠けても上品である。謎の女はしとやかに坐る。六畳敷の人生観もまたしとやかでなくてはならぬ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
口の居住いずまいくずるる時、この人の意志はすでに相手の餌食えじきとならねばならぬ。下唇したくちびるのわざとらしく色めいて、しかも判然はっきと口を切らぬ瞬間に、切り付けられたものは、必ず受け損う。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)