尼御前あまごぜ)” の例文
くぼの尼は、くぼ持妙尼ぢめうにとよばれて、松野殿後家尼御前あまごぜの娘だが、武州池上宗仲むねなかしつ日女御前にちぢよごぜと同じ人であらうともいふ。
すると、廊の外から、ことばの途切れをしおに入ってきた静かな人がある。まだ三十路みそじがらみのきれいな尼御前あまごぜであった。清子の横へ、手をつかえると。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
春色梅暦しゅんしょくうめごよみ』に藤兵衛の母親に関して「さも上品なるそのいでたち」という形容があるが、この母親は既に後家になっているのみならず「としのころ、五十歳いそじあまりの尼御前あまごぜ
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
若い尼御前あまごぜが、ふつくりとした乳白の手で悩ましくも合掌してゐる木蓮の花。
独楽園 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
けれど、そこまでは慰めであつて慰めでなく、そのあとの少しばかりが、眞に尼御前あまごぜにいはれようとした眼目だつたのだ。
もとよりこの尼御前あまごぜたちは在家ざいけの尼たちであるが、送られた手紙は、文章も簡潔で實に好い。それよりもよいのは、寄進きしんされた品目ひんもくをいつも頭初はじめに書いて、感謝してゐる率直な表現だ。