小池こいけ)” の例文
小池こいけは窓の外ばかり眺めて、インヂンから飛び散る石油の油煙ゆえんにも氣がつかぬらしく、唯々たゞ/\乘り合ひの人々に顏を見られまいとしてゐた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「アア、小池こいけ君か。せ、先生は? ……早く会いたい。……重大事件だ。……ひ、人が殺される。……今夜だ。今夜殺人が行われる。アア、恐ろしい。……せ、先生に……」
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
しかし八沢やさわの長坂の路傍みちばたにあたるところで口論の末から土佐とさ家中かちゅうの一人を殺害し、その仲裁にはいった一人の親指を切り落とし、この街道で刃傷にんじょうの手本を示したのも小池こいけ伊勢いせの家中であった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
『君の方ぢや、梨をさういふふうにして客に出すことが流行はやるのかね。』と、小池こいけは其の梨の一片ひときれつまんで言つた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
愛宕さんの祭には花踊はなをどりがあつた。ある年の祭に町の若いしうだけでは踊り子が足りなくて、他所者たしよもん小池こいけまでが徴發ちようはつされて、薙刀振なぎなたふりの役をてられたことがあつた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)