小室こま)” の例文
茶の間の方には、茶室めいた造りの小室こまさえ附いていた。庭には枝ぶりのよい梅や棕櫚しゅろなどがあった。小さい燈籠とうろうも据えてあった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
誠に感心な事だと、年はまだ二十一歳でございますが、心ある娘で、多助の後影うしろかげをしみ/″\眺め、見惚みとれて居りますと、広間のわき土廂どびさしを深く取った六畳の小室こまがございます。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
やがて二人は、浅井が行きつけの小じんまりした一軒の料理屋の上り口に靴をぬぐと、堅い身装みなりをした女に案内されて、しゃれた二階の小室こまへ通った。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
三人はある小奇麗な鳥料理の奥まった小室こまで、ビールやサイダなどを取りながら話していた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
締切ったその二階の小室こまには、かっかと燃え照っている強い瓦斯ガスの下に、酒のにおいなどが漂って、耳に伝わる甘い私語ささやきの声が、燃えつくような彼女の頭脳あたまを、劇しく刺戟しげきした。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お庄はまたくるまで、夜遅く叔父を迎いに出かけた。叔父の居所はじきに解った。そこは烏森のある小さい待合で、叔父はその奥まった小室こまに閉じ籠って女ぬきで、酒を飲みながら花にふけっていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)