小官吏こやくにん)” の例文
捨吉が初めて就いた語学の教師は海軍省へ出る小官吏こやくにんとかで、三十銭の月謝でパアレエの万国史まで教えてくれた話も引出された。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
髪はこの手合てあいにおさだまりのようなお手製の櫛巻なれど、身だしなみを捨てぬに、小官吏こやくにん細君さいくんなどが四銭の丸髷まるまげ二十日はつかたせたるよりははるかに見よげなるも
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
二階建、格子戸こうしど、見たところは小官吏こやくにん住宅すまいらしく。女姓名おんななまえだけに金貸でもそうに見える。一度は引返えして手紙で言おうかとも思ったが、何しろ一大事と、自分は思切って格子戸をくぐった。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
小官吏こやくにんになればああも増長されるものかと乃公も愛憎あいそが尽きてしもうた。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)