寝惚声ねぼけごえ)” の例文
「フム、フム」と故意わざ寝惚声ねぼけごえの生返辞をしながら大急ぎで起き上って蒲団を畳み、着物を着換え、澄まし込んで机に向って居ると
The Affair of Two Watches (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
寝惚声ねぼけごえして、破障子やぶれしょうじを開けたのは、頭も、顔も、そのままの小一按摩の怨念であった。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
のっそりめと三度めには傍へ行って大声で怒鳴ってやりましたればようやくびっくりしてふくろに似た眼でひとの顔を見つめ、ああ清吉あーにーいかと寝惚声ねぼけごえ挨拶あいさつ、やい、きさまは大分好い男児おとこになったの
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
檐下のきしたに、白と茶の大きな斑犬ぶちいぬ一頭ひとつ、ぐたりと寝ていました。——あの大坊主と道づれでしたが。……彼奴あいつ、あの調子だから、遠慮なしに店口で喚いて、寝惚声ねぼけごえをした女に方角をききましたっけ。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)