寛度かんど)” の例文
大きな人間的規格とはべつな意味で、単なる知性とか教養とかいう履歴の上では、遥かに自分より彼のすぐれていることを是認ぜにんするだけの寛度かんどを持っていた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、高野衆こうやしゅうはこぞって、連署の誓紙をしたため——これを木食上人もくじきしょうにんに託して、ひたすら秀吉の寛度かんどを仰いだ。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
怖ろしく短気に見える信長の一面に、こういう気長な寛度かんどがあるのが、帯刀たてわきには、ふしぎにさえ思われた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なるほど、不届きな呂布です。——けれど太師。天下へ君臨なさる大望のためには、そうした小人の、少しの罪は、笑っておゆるしになる寛度かんどもなければなりません」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
川中島大戦後、もうひとつ謙信の気宇きうをあらわしたものがある。斎藤下野、黒川大隅などの甲州に捕われていた使者の一行が、信玄の寛度かんどによって、無事、越後に帰って来てからである。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分にたいする大塔ノ宮があくまで抱擁の寛度かんどもない冷ややかな“他人”であることはつとに承知だが、それは世間知らずのお人がおちいりやすい周囲からの誤解と観て、決してこころよくはないが
ここで自分へ貸すぐらいな寛度かんどはありそうなものと
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)