寂漠せきばく)” の例文
多門の心にはこれまでになく寂漠せきばくとしたあるものが感じられ、その感じは刻々とさってゆくように思った。多門は胴ぶるいをした。
ゆめの話 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
まるで歌壇は寂漠せきばくたるもので、ことに後堀河院は二十三で崩御、次の四条天皇は十二で崩御というふうに、歴代お若かったのであるから
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
我輩のトランクと書籍は今朝三時頃主人が新宅へ運んでしまったので、残るのは身体ばかりだ。何となく寂漠せきばくの感がある。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
入り江の奥より望めば舷燈げんとう高くかかりて星かとばかり、燈影低く映りて金蛇きんだのごとく。寂漠せきばくたる山色月影のうちに浮かんで、あだかも絵のように見えるのである。
少年の悲哀 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
寂漠せきばくとひろしまは燃え
原爆詩集 (新字新仮名) / 峠三吉(著)
「これは何という寂漠せきばくとした、しかも動かない風物であろう、——この中に封じ込められているということは、夢でなくて何んであろう。」
みずうみ (新字新仮名) / 室生犀星(著)