容貌かおつき)” の例文
自分ながら嫌気のするような容貌かおつきをもう一度映しなおして見た、岸に咲きみだれた藤袴ふじばかまの花が、私の影にそうて優しい姿を水に投げている。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
而して熟々つくづくと穏かな容貌かおつきが慕わしうなり、又自分も到底この先生のようではないけれど、やはり帰趨きすうなき、漂浪児であるという寂しいかんじになった。
それに筋骨のたくましさ、腕力のすぐれていること、まあ野獣と格闘たたかいをするにもえると言いたい位で、容貌かおつきは醜いと言いましても、強いすこやかな農夫とは見えるのでした。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一通り話を聞いてしまうと、ホートンは鳥渡ちょっと頷いたがしばらくじっと考え込んだ。彼の容貌かおつきは憂鬱になって其眼の光は失われた。彼は探偵ではあったけれど同時に一個の詩人であった。
喇嘛の行衛 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)