家鳩いえばと)” の例文
「旦那様、お鈴様から御返事が……」と今も召使の東助爺とうすけじいが、柄の小さな家鳩いえばとこぶしにのせて、縁の端から一八郎の書屋しょおくのぞいた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
竹の中で家鳩いえばとという鳥が調子はずれに鳴くのを聞いて源氏は、あの某院でこの鳥の鳴いた時に夕顔のこわがった顔が今も可憐かれんに思い出されてならない。
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
私の家だけは早くこの形勢を察して、軒のひさしに五つばかりの巣箱を作ってやったが、雀が家鳩いえばとになるのは困難だと見えて、その半分はまだ空屋のままである。
「戻ってくれた、戻ってくれた、手飼てがいの密使——」ハタハタという音さえ嬉しく聞いて、こぶしを出していると、馴れきっている銀色の家鳩いえばと、スーと下がってきて、その手へ止まった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)