アンチテーゼ)” の例文
僕の心の中には常にテーゼアンチテーゼとがある。一つの聲がさうだと云ふともう一つの聲がさうぢやあるまいと云ふ。
三太郎の日記 第二 (旧字旧仮名) / 阿部次郎(著)
僕の心の中では純粹に他人離れのした生活に於いても猶、テーゼアンチテーゼとが相對して可なり才走つた會話を交換してゐる。君はまるで人聲がしない筈の處に話し聲がすると思つたかも知れない。
三太郎の日記 第二 (旧字旧仮名) / 阿部次郎(著)
僕の世界に話し聲が聽える事實は僕の自己沈潛が人交ぜをしてゐると云ふ證據にはならない。尤も僕の中にゐるテーゼアンチテーゼの會話は可なり才ばしつてゐるから、まだ/\しんみりした味が足りない。
三太郎の日記 第二 (旧字旧仮名) / 阿部次郎(著)