実兄あに)” の例文
(馬鹿——)と、実兄あにののしった。(きょうの御打擲は、慈父の太刀だ。あの大愛の木剣がわからないのか)
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何うしても一旦かどなく公然おもてむき離縁をするンじゃに依って、此者これ実兄あに深川佐賀町の岩延いわのべという者のところへ、千円の持参金に箪笥長持衣類手道具とう残らず附けて帰さなければ成らん
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
国表の実兄あにや親戚へ云ってやれば——とも考えるが、日数の程が間にあうまいし、又、日数があっても、金子きんすの頼みなど、受け付けてくれる身寄はないかも知れぬ。
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
又十郎も、慚愧ざんきに堪えぬように俯向いて実兄あにの前にひざまずいた。
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)