安来やすぎ)” の例文
旧字:安來
薩摩琵琶、浪花節よりもっと「露骨」な安来やすぎ節、鴨緑江おうりょっこうぶしが勢力をえて来ている。そのかみの壮士芝居よりもっと「浅薄」な剣劇が客を呼んでいる。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
日野川の上流に沿い、日ならず、出雲いずも街道は車尾村に出る。そこで一日、ご駐輦ちゅうれんの後、米子よなごから出雲の安来やすぎをすぎ、さらに船で美保みほせきまで渡られた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「獺に教へれば、芸の威光さ。ぢやあ、私が唄ひながら。——いかい、——安来やすぎ千軒せんげん名の出たところ……」
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かかる無銘のものは、すべて在銘のものよりはるかに素直でいい。その茶碗の美しいのを能義のぎ郡でも焼いた。広瀬の八幡窯、母里もりの皿山、安来やすぎの皿山、それぞれに美しいものを産んだ。
雲石紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
安来やすぎ節や鴨緑江おうりょっこう節を寄席よせ芸人に劣らぬ節廻しで聞かせるほど、それほど悪達者であろうとは! いつも英語でばかり話していた要が、それを知って驚かされたのはつい最近のことなのである。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
安来やすぎぶしのおんなは、驚駭おどろきの声を合せた。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)