嬌声けうせい)” の例文
旧字:嬌聲
しかしその瞬間に彼の鼓膜こまくは「私はX子と云ふのよ。今度御独りでいらしつた時、呼んで頂戴」と云ふ宛転ゑんてんたる嬌声けうせいを捕へる事が出来た。
東京小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
浪花節なにはぶし、からかひと嬌声けうせい、酒のこぼれ流れてゐる長い木の食卓、奥の料理場から、何々上り! と知らせる声なぞの雑然とした——安酒場の給料日であるが——夜更けて、四辺は静かになり
日本三文オペラ (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
甲板かんぱんや廊下を下駄で走りまはるものや、飲み屋の女の嬌声けうせいも聞えた。幾度となく、富岡達の部屋のドアを開けて、なかをのぞきこむものもある。富岡もゆき子も、この無作法には驚いてしまつた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)