嫋女たおやめ)” の例文
「ついぞ見かけたことのないもので、ひとりは四十がらみのおうな、気の狂うた方は、まだ二十歳にもみたぬ嫋女たおやめでございますが」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その昔、なにがしの君が大堰川のほとりで蹴鞠けまりの遊びを催されたときに、見物のうちに眼にとまるような嫋女たおやめがあった。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
だが、お菊ちゃんのまえにもう一人、泣いてでもいるらしい町風の嫋女たおやめがややくの字形じなりに坐って俯向うつむいている。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
桂殿という嫋女たおやめをお見出しあって、浮れあるきに余念もおわさぬところへ、われわれのごとき邪魔外道げどうが附きまとうては、かえって御機嫌を損ずるでござろうぞ。
修禅寺物語 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その筋肉のあらあらした隆起りゅうきや青髯の痕にくらべて、かたわらから扇で風を送っている嫋女たおやめは余りに優雅みやびていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)