奴隷やっこ)” の例文
身狭乳母むさのちおもの思いやりから、男たちの多くは、唯さえ小人数な奈良の御館みたちの番に行け、と言ってかえされ、長老おとな一人の外は、唯雑用ぞうようをする童と、奴隷やっこ位しか残らなかった。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
この世から消えてなくなりました。僕は全然恋の奴隷やっこであったからかの少女むすめに死なれて僕の心は掻乱かきみだされてたことは非常であった。しかし僕の悲痛は恋の相手のなくなったが為の悲痛である。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
屋敷中の人々は、上近くつかえる人たちから、垣内かきつの隅に住む奴隷やっこ婢奴めやっこの末にまで、顔を輝かして、此とり沙汰を迎えた。でも姫には、誰一人其を聞かせる者がなかった。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
二人はたちまち恋の奴隷やっことなって了ったのです。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
だから、くわの家に、奴隷やっこになって住みこんだいにしえあてびともあった。娘の父にこき使われて、三年五年、いつか処女に会われよう、と忍び過した、身にしむ恋物語りもあるくらいだ。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)