奔濤ほんとう)” の例文
断層をなした激流の見渡すかぎりは、白波天にみなぎり奔濤ほんとう渓潭けいたんを噛み、岸に立つや否、馬いななき衣は颯々さっさつの霧に濡れた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれど、奔濤ほんとうは、迫って来た。すでに防禦線の一角はくずれ、中国も時代の旋風の外ではあり得なくなったのである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「勝機は今!」と、確信したものか、奔濤ほんとうの勢いをそのまま揚げて、直ちに、小沛まで詰め寄せてきた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし実地に立って、すさまじい奔濤ほんとうを見ては、なおさら自己の小智に圧倒を感じるばかりだった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、その奔濤ほんとうの中にも、溺れず沈まず、この凄じい洪水の形相をむしろ楽しんでいるかのような影もあった。それは関羽の乗っている兵船や、蜀兵が弓槍を立て並べているたくさんないかだだった。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雪解ゆきどけの赤い濁流が、樹々の間に奔濤ほんとうをあげて鳴っていた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)