天禄てんろく)” の例文
味方の一兵一卒も損せず、主君の領土の一木一石も用いずに、築きあげたこの城だ。五百貫の禄地も、敵から斬り取って、天禄てんろく
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを思えば、こん夜の酒は、どうせ百姓家から盗みだした地酒で味はわるいが、時にとっての天禄てんろくの美味っていうやつだ
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
飯のため、飯に使われてあくせくせんのが武士だ。天職のために、御奉公の本分のために、生涯する。飯はつき物、人間の天禄てんろくだ。——頼むから、貴様あ、飯を
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黄匪こうひの害に泣いている地方はたくさんある。まずその地方へ行って、黄巾賊を追っぱらうことだ。その後には、正しい税と食物とが収穫される。それは掠奪でない。天禄てんろくだ。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「孫家の兄弟は、いずれも才能はあるが、どれも天禄てんろくを完うして終ることができまい。ただ末弟の孫仲謀そんちゅうぼうだけは異相である。おそらく孫家を保って寿命長久なのはあの児だろう」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうやって、横手を打っていられるが、それらの罪業ざいごうはみな、自分にかえってくるものなのだ。おのれの天禄てんろくをおのれで奪い、おのれの肉身をおのれで苦患くげんへ追いやっているのだ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
食物は鳥獣でさえ天禄てんろくというものがあるのに、万物の霊長といわれる人間が、ただ喰うためにのみ働いて、この世を楽しむすべも知らないというのは、情けないことではないか。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(食物は、どこにでも得られる物だ。人間には天禄てんろくがあるから)
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)