天狗連てんぐれん)” の例文
水戸の党派争いはほとんど宗教戦争に似ていて、成敗利害の外にあるものだと言った人もある。いわゆる誠党は天狗連てんぐれんとも呼び、いわゆる奸党は諸生党とも言った。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
交番の前でねずみをぶら下げて居る小僧を見たり、天狗連てんぐれん御浚おさらえを聴いたりして肝腎かんじんの買物は中々弁じない。所が忙がしい人になると、そんな余裕はない。買物に出たら買物が目的である。
高浜虚子著『鶏頭』序 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
所柄ところがら、なかなか富本が流行はやりまして、素人しろうと天狗連てんぐれんが申し合せ
むしろ肥満長身の泰然たる風采ふうさいの人で、天狗連てんぐれん追討のはじめに近臣の眠りをさまさせるため金米糖こんぺいとうを席にまき、そんなことをして終夜戒厳したほどの貴公子に過ぎない
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
時代の空気の薄暗さがおよそいかなる程度のものであったかは、五年の天井裏からはい出してようやくこんな日のめを見ることのできた水戸みと天狗連てんぐれんの話にもあらわれている。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しからば御無礼する、あとの事はよろしく頼む、そう言い捨てて、侍は二人ともそこを立ち去り、庭からかきを乗り越えて、その夜のうちに身をかくしたという。これが当時の水戸の天狗連てんぐれんだ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)