天上界てんじょうかい)” の例文
けれど、そのほしは、めくらぼしでありました。ほかのおほしさまのように、とおく、たかく、からはなれて、天上界てんじょうかいむことができないのであります。
めくら星 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「それは見ることは誰にでも出来ます。美しいと申して、竜宮りゅうぐう天上界てんじょうかいへ参らねば見られないのではござらんで、」
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蒼白あおじろ面高おもだかけずせる彼の顔と、無辺際むへんざいに浮き出す薄き雲の翛然ゆうぜんと消えて入る大いなる天上界てんじょうかいの間には、一塵の眼をさえぎるものもない。反吐は地面の上へ吐くものである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
悟浄がかつて天上界てんじょうかい霊霄殿りょうしょうでん捲簾けんれん大将を勤めておったとは、この河底で誰言わぬ者もない。それゆえすこぶる懐疑的な悟浄自身も、ついにはそれを信じておるふりをせねばならなんだ。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)