大患おおわずら)” の例文
「何が嘘じゃ? この村のものにも聞いて見るがい。己は去年の大患おおわずらいから腰ぬけになってしもうたのじゃ。じゃが、——」
伝吉の敵打ち (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あの時分、奥さんは大患おおわずらいをなすった後で、まだ医者に見てもらう必要があって、一日おきに芝口しばぐちのお宅から万世橋まんせいばしの病院まで通っていらしった。
途上 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
広岡学士は荒町裏の家で三月あまりも大患おおわずらいをした。誰が見ても助かるまいと言った学士が危く一命を取留めた頃には、今度は正木大尉が倒れた。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それから大分たって、私は一生に一度の大患おおわずらいをした。健康保険もない時代であるし、六十円の月給では、病院のベッドに寝ていても、全く生きた空はなかった。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
次に引き移って行った家では、その夏子供が大患おおわずらいをした。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)