大伴家持おおとものやかもち霍公鳥ほととぎすの歌であるが、「夏山の木末のしじ」は作者のたところであろうが、前出の、「山の際の遠きこぬれ」の方がうまいようにもおもう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ことし、四十を二つ三つ越えたばかりの大伴家持おおとものやかもちは、父旅人たびとの其年頃よりは、もっと優れた男ぶりであった。併し、世の中はもう、すっかり変って居た。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
大仏鋳造終ってなお塗金不足だったとき、陸奥むつの国から黄金を献上したことは、大伴家持おおとものやかもちの長歌によって有名である。その折どんなに御喜びになったか。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
宮崎はすなわち東端越後境えちござかい海角かいかくであって、是から吹きつける風のみが大伴家持おおとものやかもちらのたもとひるがえし、能登から吹くアイは山にさえぎられて、このあたりでは心づかれなかったので
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そうなればいよいよ崩れぬような人工も加わって行くのである。越中の布勢ふせなどは大伴家持おおとものやかもちの時代からすでに潟で、その岸は街道であった。その東の奈胡浦なごのうらは後世の放生津ほうじょうつである。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)