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まつは
彼の新なる悔は切に
夤るも、
徒に凍えて水を得たるに
同かるこの
両の者の、
相対して
相拯ふ能はざる
苦艱を添ふるに過ぎざるをや。
捨置かば
如何に募らんも知らずと、貫一は用捨無く
※放して、起たんと為るを、彼は
虚さず
夤りて、又泣顔を
擦付れば、
怺へかねたる声を励す貫一
今やその願足りて、しかも
遂に饜きたる彼は
弥よ
夤らるる愛情の
煩きに
堪へずして、
寧ろ影を追ふよりも
儚き昔の恋を思ひて、
私に楽むの
味あるを覚ゆるなり。