まつは)” の例文
彼の新なる悔は切にまつはるも、いたづらに凍えて水を得たるにおなじかるこのふたつの者の、相対あひたいして相拯あひすくふ能はざる苦艱くげんを添ふるに過ぎざるをや。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
捨置かば如何いかに募らんも知らずと、貫一は用捨無く※放もぎはなして、起たんと為るを、彼はすかさずまつはりて、又泣顔を擦付すりつくれば、こらへかねたる声を励す貫一
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
今やその願足りて、しかもつひに饜きたる彼はいよいまつはらるる愛情のわづらはしきにへずして、むしろ影を追ふよりもはかなき昔の恋を思ひて、ひそかに楽むのあぢはひあるを覚ゆるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)