夢遊病者むゆうびょうしゃ)” の例文
そして最後に、自分が夢遊病者むゆうびょうしゃであって、妻を殺してしまったというところまで考えると、それで一段落いちだんらくになるのです。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
休憩所をふらふらと出て、夢遊病者むゆうびょうしゃのように町から村を過ぎ、私の住居だった家なんか見顧みかえりもしないで、畑の畔つたいに彼女の部屋の方へ近寄っていったのです。
流転 (新字新仮名) / 山下利三郎(著)
夢遊病者むゆうびょうしゃとして昨夕ゆうべ彷徨さまよった記憶が、例の姿見すがたみの前へ出た時、突然津田の頭にひらめいた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
顔は帽子のかげになって、よく見えませんが、なんだかドス黒い顔で、それが少しもわき見をしないで、夢遊病者むゆうびょうしゃのように正面をむいたまま、ガックリガックリ歩いているのです。
青銅の魔人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ふらふらと居間を立ち出でた萩乃が夢遊病者むゆうびょうしゃのようにこの廊下にさしかかると、壁にもつれる人影——何心なくたちどまった耳に、今までの二人の話が、すっかり聞こえてしまったので。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
その結果夜中になって、その男をさくらぼうの寝床から脱け出させる。うつつともまぼろしともなく彼は服を着て、家の外にとび出すのだ。一寸ちょっと夢遊病者むゆうびょうしゃのようになる
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「まさか、きみは、ねむったまま、歩きまわる夢遊病者むゆうびょうしゃじゃあるまいな。」
鉄塔の怪人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)