かたち)” の例文
どう見ても千浪のほっそりしたかたちに間違いないので、時やその他の不合理を疑う余裕もなく、すぐ身をひるがえして後を追って行った。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まるで業が未熟である癖に矢鱈に気どつたかたちばかりを執つて逆上するので、却つて反対の効果を与へてしまふのであるらしかつた。
武者窓日記 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
やっぱりいつ迄もいつ迄もジーッと立ちはだかったまま睨み付けている義兄の手前何ともかたちがつかなくなると、てれかくしにまた取って付けたような声音こわね
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
「重くはないさ。」と、鬚があり口のかたちがある鉄の面の上で重い作り声がした。「だけど俺には之を着ては到底いくさは出来さうもない。」
籔のほとり (新字旧仮名) / 牧野信一(著)